現代医学・東洋医学の病気へのアプローチの違い
『現代医学』
- 既に発症している病気に効果的
- 「病気そのもの」を診る
- 症状を薬で抑えたり、病巣を処置で取り除くなど、病気そのものに作用
『東洋医学』
- 病気は発症していないが、身体の不調がある時に効果的
- 「身体全体の働き」を診る
- 気血水の流れ・寒熱のバランスを整えることで、身体全体の働きに作用
病気が発症しないように、身体全体の働きを整えること。(=体質改善)
これが東洋医学の得意とするところで、まさに予防医学とも言えます。
鍼灸に期待できる効果
鍼灸は、自律神経反射の1つ「体性内蔵反射」を利用した施術です。
- 自律神経系(循環、呼吸、消化、代謝、分泌、体温維持、排泄、生殖)
- 内分泌系(ホルモン分泌に関連)
- 免疫系(生体内侵入物を排除する白血球や抗体)
これら3つの機能は相互に作用し合っており、鍼灸の体性内蔵反射を通して、次の様な生理学的効果があります。
- 興奮・鎮静作用
- 血流の調整
- 消炎・鎮痛効果
- 免疫機能の向上
- 自律神経機能の調整
免疫機能の向上の効果もあるため、鍼灸は病気の予防に寄与するところがあると、現代医学的にも考えられています。鍼灸を定期的に受けることで、次のようなお身体の変化が期待できます。
- ストレスの緩和
- 首、肩、腰、腹部の緊張緩和
- 深部体温の上昇
- 手足末端の血流改善
- 疼痛の緩和
- 冷え、むくみ、ほてり、胃もたれ、眠りが浅い等、不定愁訴の改善
※鍼灸と自律神経との関わりについての詳細は、下記コラムをご一読下さい。
鍼灸と自律神経との関わり
鍼灸の適応となる症状
具体的に次のような症状をお持ちの方に、鍼灸が推奨されます。
- 病院で検査しても異常が見つからない
- 病院を受診する程ではない身体の不調
- 自律神経失調による諸症状
・首・肩こり、腰痛
・便秘、下痢、胃もたれ
・慢性的な頭痛、眼精疲労
・疲れやすい、だるい
・眠りが浅い
・寝つきが悪い、寝起きが辛い
・冷え、むくみ、のぼせ、ほてり
・ストレスが強い、イライラする
・花粉症、夏バテなど季節に伴う不調
・月経に伴う不調、更年期障害
・妊活中、妊娠中、つわり、逆子、産後の肥立ち
現代医学的に証明された疾患
2002年世界保健機関(WHO)リポートでは、鍼の効果が期待できる疾患について4段階に分類して報告されています。そのうち、第一類と第二類は下記の通りです。
第一類:鍼が効果的な施術であると証明されたもの
放射線療法・化学療法に対する副作用 | アレルギー性鼻炎(花粉症を含む) |
胆道疝痛 | うつ病(抑うつ性神経症、脳卒中後うつ病) |
赤痢、急性細菌性下痢 | 月経困難症 |
急性上腹部痛(十二指腸潰瘍・胃潰瘍、急性・慢性胃炎、胃痙攣を伴う) | |
顔面痛(頭蓋下顎障害を含む) | 頭痛 |
本態性高血圧症 | 本態性低血圧症 |
誘発分娩 | 膝関節痛 |
白血球減少症 | 腰痛 |
逆子 | つわり |
悪心・嘔吐 | 頸部痛 |
歯科に関わる疼痛(歯痛、顎関節症を含む) | 肩関節周囲炎 |
術後痛 | 腎疝痛 |
関節リウマチ | 坐骨神経痛 |
捻挫 | 脳卒中 |
テニス肘 |
第二類:鍼の施術効果は見られるが更に証明が必要なもの
腹痛(急性胃腸炎、胃腸攣縮) | 尋常性ざ瘡 |
アルコール依存症と解毒 | ベル麻痺(顔面神経麻痺) |
気管支喘息 | 癌性疼痛 |
心筋症 | 慢性胆嚢炎の急性増悪期 |
胆石症 | 競合ストレス症候群 |
閉鎖性頭蓋脳損傷 | インスリン非依存型糖尿病 |
耳痛 | 流行性出血熱 |
鼻血(全身性・局所性疾患を伴わないもの) | 結膜下注射による目の痛み |
女性不妊 | 顔面けいれん |
女性尿道症候群 | 線維筋痛症、筋膜炎 |
胃腸障害 | 痛風性関節炎 |
B型肝炎ウィルスキャリア | 帯状疱疹(HHV-3 ヒトヘルペス3型) |
脂質異常症 | 卵巣機能不全 |
不眠症 | 陣痛 |
乳汁分泌不全 | 器質性ではない男性性機能障害(SD) |
メニエール病 | 帯状疱疹後神経痛 |
神経皮膚炎 | 肥満 |
アヘン・コカイン・ヘロイン依存症 | 変形性関節症 |
内視鏡検査による疼痛 | 閉塞性血栓性血管炎の疼痛 |
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)(スタイン-レーベンタール症候群) | |
小児の気管チューブ抜管 | 術後回復期 |
月経前症候群(PMS) | 慢性前立腺炎 |
皮膚掻痒症 | 神経根性疼痛・擬似神経根性疼痛 |
レイノー症候群 | 反復性下部尿路感染症 |
反射性交感神経性ジストロフィー(RSD) | 外傷性尿閉 |
統合失調症 | 薬物誘発による唾液分泌過多 |
シェーグレン症候群 | 咽頭炎(扁桃炎を含む) |
参考文献・リンク
- 教科書執筆小委員会 著, 社団法人東洋療法学校協会 編 : はりきゅう理論. 医道の日本社 2002.
- World Health Organization : Acupuncture: Review and Analysis of Reports on Controlled Clinical Trials. Geneva : World Health Organization 2002.
WHO Health Systems Library - National Institutes of Health : Acupuncture. National Institutes of Health Consensus Development Conference Statement November 3-5, 1997.
NIH Consensus Development Program Acupuncture